2006年 05月 30日 ( 1 )

活字中毒? 2

本日、PHP新書発行の香山リカ著「貧乏クジ世代」を読書開始&読了。
この書籍に関して2点興味がありました。

まず、著者である香山リカ氏について。

1.精神科医である彼女の本名は「香山リカ」ではない
2.かけている眼鏡はダテ眼鏡である
3.彼女が言っているコトは「当たり前」のことであって、コメントされたところで何ら意味が無い

という批判を聞いていたからです。

これは批判者側にとって面白い発見だったのかもしれないけれど、私は彼女の職業上のテクニックだと考えているからです。

というのも、

1.リカちゃん人形の名前(香山リカ)を借用することで他者から見た匿名性や現実味を演出することは彼女自身の存在を仮想現実化することになり、クライアント(患者)が抱く緊張感を緩和させるのに有用である。

そして、

2.眼鏡を装着することで彼女自身が「香山リカ」という仮想現実的存在に変身するということが可能になる。

この双方の「お約束」の上で展開される治療法は、双方が客観的に事象を分析、展開するのに大変有効であると考えられるということ。
これは既に「香山リカの存在を認知した時点で治療行為が始まっている」と考えるに充分な要素を満たしていると思っています。

さらに、

3.「当たり前のコト」というのも、臨床から得られた結果というのは現実的になることが必然であって、そこに意外性があろうはずは無い。そもそも、そこに意外性があった場合には、言うなれば「異常」な状態なのだから。

次に、彼女が言うところの「貧乏クジ世代」に該当する私を含めた30代前半前後の人間は、現実問題として自身が置かれている境遇について自覚し、疑問に感じているからです。

そこで、このテクニックを持つ精神科医がどのように我々を観ているのか大変興味があったから、この本を手にしたというワケです。

結論から言うと、確かに「当たり前」のコトを書いています。
しかし、それは事実であり、我々が感じている境遇や疑問を的確に記述していると思います。

そして、無味乾燥なデータや、一見有効そうに見えつつも、あまりに一般的すぎて現実味を帯びない引用を極力抑え、ここまで「当たり前」の言葉で論旨を展開することが出来るというのは素晴らしい能力だと思います。
これは先に述べたように臨床医ならではの現実的論理展開だということができるでしょう。

では、その結論は何だったのか?
これは「そこに結論は無い」と言い切って良いと思っています。

これについて「また香山リカの手法か?」と批判することは容易ですが、クライアントの境遇は個々別々のものであり、一概に結論を出すのは早計であり意味が無いことです。

何より、個々の相異を無視して単純に結論を出すことや、クライアント側が安易にそれを理解する方がキケン。
これはかえって齟齬や迷いを生み出す原因になると思います。

結論は出ていないが、指摘及び分析として理解できる部分がある。

このことが有効なのだと思います。
それは、いわゆる認知療法と同じで、「今、私達はどういう状況下ですか?」から始まり、「では、私達はどのようにすれば良いでしょうか?」という展開を示唆しているからです。

このように、「貧乏クジ世代」は、私にとって大変興味深い書籍でした。
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by coopiecat | 2006-05-30 23:16